才能開花
おはよう
あれ？どこに俺いるんだろう？
あーそっか、旅に出たんだった。
いまは船の上か、甲板で寝ちまってたよ。
波に揺られてると心地よくて寝ちゃうんだよな。
わるい、わるい
この船ってどこ行くんだっけ、
あれ、この船、針路間違えてねえか？
俺が思うに方向は確か右だよな・・・
おい！舵、右に切ってくれよ！
・・・あれ、なんだよあいつまた悪い癖で船酔いしてるよ。
あいつはさ、ネガティブだから船だめなんだよ。
色んな針路があったり、内輪で何かあったらすぐ一人で抱え込んで、
自分でいっぱいいっぱいになりやがる。
そして最終的には海に身投げしようとしやがる、悪い癖だよばかやろう。
抱えてるもん全部ゲロと一緒に吐き出しちまえ。
汚くたって俺らはもう同じ船に乗っちまったんだからよ。
うわ！吐いちまったよ・・・、
いいよ俺らが全部片づけてやるからしっかり睡眠とれ。
海の上で夜起きてたっていいことなんもいいことなんかねえよ。
なんでこの船に乗ってくれって言ったんだっけな？
楽しいのはそりゃそうなんだけど、
あーそうだ一番こいつが気が利いて空気が読めるからだったわ。
とがったやつばっかだったり、
ポジティブにしか物事考えられないやつばっかりだと、船が沈んじゃうからな。
ネガティブだからこそ、おまえは人一倍、人に寄り添えるんだったな。
ちがう、考えすぎるからこそ、
どうでもよくなっちゃうタイプのHSPだよ。
別に普通のことよ。
もっと図太くならないと舐められんぜ？
弱みは文脈次第で強みに化けるんだってな、
実はその性格とか弱みが才能だったりすることがよくある。
・・・
そうそう、舵を右だった。
まあいいや、そこにいるやつ誰だ？
なあ、右に切ってくれよ！
あん？左？
まーた、俺の逆のこと言いやがって…。
あいつは、いつも俺に何か言ってくる。ちくしょうめ！
俺は右だって言ってるのに・・・
右！右だって！もー！
え？あ、そうなの。
そういうこと、なるほどね、じゃあ左なのか。
じゃ左！
あっぶねー、嵐に突っ込むところだったぽい。
ギリギリせーふ。
人に意見言われるの嫌いだけど、
あいつの意見は何か聞けるんだよな。
俺っちは賢いから筋とか論理とか仁義とかが通ってないことに耳を傾ける気はないけど、あいつは俺と同じビジョンとか絵が視えてるから話を聞く気になるんだなたぶん。
だから副船長になってもらったんだっけな。
可愛げはないけど、間違ったときに方向転換してくれる能力は間違いないか。
ただたまにドライなんだよなあ、プツってなる癖はあるっけなあ。
たまには船長代わってよ。
痛いっ！
誰？ここにマキビシ置いたの？
血出たんだけど・・・
あ、ありがと。
いつも絆創膏持ってるね君は、背高いのに繊細ね。
その治療スキルどこで習ったの。
そういやガキの頃の一件が医療の道に君を行かせたんだっけ。
苦労してるねえ、君も。
俺の保護者みたいなもんだな。
馬鹿みたいに酒飲んでふらっふらになったときも家まで担いでもらったっけ。
その優しさがやるやんって思ってこの船に乗ってもらったんだっけ。
なんかあっても馬鹿だなって笑ってくれるやつであり、
真面目に話を聞いてくれる一面もあったな。
もっと馬鹿になってこうぜ。
うわ！
とか言ってる間になんか海に飛び込んでるやついる！
あいつは死なないから助けなくていいか・・・
脳筋だし・・・
方向転換できないやつだからなあいつ。
右の針路を俺は話聞いて左に変えられるけど、
あいつは頑なに針路変えないからなあ。
バランスをとってほしいよ、
その突破力はピカイチだけどな。
ただ、強みが弱みに変わることだってあるんだよな。
馬鹿だから何に対してもガツンガツンぶつかってちゃうんだよお前は。
知ってるからいいけど。
俺とはまた違った種類の自己肯定感の塊だよ。
まあただ、騒いでるときにはお前がいたほうが楽しいんだ。
全員が全員違ったピエロになれるのが面白いとこだな。
お、さっきまでゲロ吐いてたやつが、ロープ降ろして助けてらあ。
はやく左に針路を変えないと嵐が来るってのに・・・
この船ポンコツだから、
それぞれの役割果たさないと針路変えられねえんだよまったく。
あれ、そういえばこの船はどこに行くんだっけ？
まあいっか、この旅そのものが楽しければ。
そんなもんだろ人生も。
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